『王妃の紋章』

fai22008-04-16

  今週、香港では金像奨授賞式も無事行われ、ジェット・リーとスーチン・ガオワーが主演賞を受賞したようですね。それにしても、『投名状』の受賞っぷりがすごい。ピーター・チェン監督に、ジェット・リーアンディ・ラウ金城武と、アジアの最高パワーの才気を結集しているだけあって、素晴らしい結果を収めたものです。
  
  最高パワーと言えば、12日に『王妃の紋章』を見てきました。
  これはまた、はるかに私の想像を越えた絶作で、チャン・イーモウ監督にものの見事にゴールデン・パワーの極致へ誘われ、冒頭の宮殿の官女たちのお衣装準備のシーンから、ゴクリと生唾飲み込んで、ほうーーーっ、と見ているうちに、あっという間にラストでした。いや、いや、監督もだが、さすがにコン・リーの貫禄とチョウ・ユンファの食えない王さまっぷりがお見事!『きれいなお母さん』のコン・リーとこの母后さまが同じコン・リーとは・・・。色彩にこだわるチャン・イーモウ、今回は映画全編が金、金、金で、目もくら無ほどのまばゆさ。そして物語のクライマックスが重陽節の儀式とあり、菊、菊、菊、で、まっ黄色。凝らせたら、中国人にかなう民族はいないだろうといつも思っていますが、はい、やはり、この映画を見て、改めて確信しました。なにしろ、絢爛豪華の極みです。入れ物や仕立てだけがそれじゃあ、大変陳腐な作品になりそうですが、登場人物も華麗なる一族で、主演の2大俳優の圧倒的な存在感は言うまでも無く、3人の王子たちのキャラクターもそれぞれ、気弱だったり、素朴だったり、いい子ぶりっ子のヒガミっ子だったりと、愛憎と苦悩が渦巻いていて、ドラマとしても納得のいくものでした。コン・リーに利用される元王妃と薬師の娘;蝉のエピソードにはかなり気の毒さを感じ、哀れでした。このテの時代劇に大団円というのは存在せず、結末はやはり悲愴で、弱きものは『女帝』や『投名状』と同じようにアガサ・クリスティーの代表作タイトルとあいなるわけだが、コン・リーの演じた王妃は本当にトリカブトの毒くらいでは死なないくらいの壮絶な迫力がみなぎってた。身体、特に胸の部分の巨大な肉弾はまるでサイボーグ!(笑) ユンファも、あごひげには白いものが混じっているものの、まだまだ自分の世が続くと信じて疑わない王のサガのような傲慢さと悲しさを巧みにかもし出していた。第一皇子のリュウ・イエも義理の母との苦悩に満ちた関係を絶ち、王家を捨ててでも安息の場所を見つけたいと願うが、やはりゴールデンな家に生まれた育ったお坊ちゃんゆえ押しが弱い。第二皇子のジェイ・チョウは武才に恵まれ、父からも母からも期待を担っているが、心根が美しく正当であるがゆえに悲しい宿命にそむけない。第三皇子は、終盤で彼が「みんな、ぼくのことなんて忘れてる!どーでもいいんだろ!」と叫んだ時まで、はい、確かに忘れてました。(笑)。。でも、なかなか彼の立場や演技も絶妙で、重陽の儀式の礼服の下にひそかに鎧を纏っていたのも彼の秘められた意思を見た感ありでした。
  それにしても、あの宮廷の中庭を敷き詰める人、人、人。JAY将軍や王の軍隊の攻め入る軍、軍、軍。峠や山の上からカラスのように跳んで攻めて来るまるで忍者の群、群、群。人海戦術となれば、これまた、中国人にかなう民族はおりませんが、あまりにもめくるめく大群なので、本物のエキストラなのか、CGなのか、全く見分けがつきかねました。
  そして、ラストのJAYの菊花台だかなんだかっていう歌、とても良かった。JAYはアルバム『七里香』がベスト、それ以降は特に心惹かれる曲はないと思っていたが、いえ、いえ、まだまだ心温まる名曲が隠れていたのですね。オオラスでとても感動的な曲を聴けてよかったです。

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