春近し 

fai22008-02-16

  たとえ現在どこに住んでいても、愛媛県松山市で育った人間にとって、『椿さん』と言う言葉はかなり日常のいろいろなシーンで比喩や引用として使われる。うちの親もそうだったが、東京へ来た松山の友人たちが必ず言うセリフは、「なんか東京って毎日が『椿さん』みたいやね」。この意は「東京は毎日がお祭りのように人が多い」ということ。松山人ならほぼ誰にでも通じる比喩である。また、「このところ一段と寒いと思ったら明日から『椿さん』やね」とか、「『椿さん』も終わったから、もう春も近いね」などと季節の会話としても成立する。
  松山市にある伊豫豆比古命神社を土地の人々は尊敬と親しみをこめて『椿神社』とか『お椿さん』と呼ぶのだが、その神社が毎年旧暦の1月7・8・9日の3日間春祭を斎行する。その春祭は『椿まつり』と称され、私たちが一般的に『椿さん』というのはその『椿まつり』のこと。『椿さん』が斎行される時期は、その昔「立春に近い上弦の月の初期」と定められたようで、この頃がちょうど冬の厳しい寒さも峠を越し、万物の芽が息吹き始める時候。農業漁業に従事する人も商売を営む人もみな『椿さん』で1年の息災を祈願する。時代が変わっても、今も昔も『椿さん』は変わらず賑やかに斎行され、その際参拝の人々で参道が溢れかえり、地元では一番の人出の時となる。
  今年の椿さんは2月13、14、15日だったようで、昨日で終了。冬本番も終わり、これからだんだん暖かくなる。四国育ちで冬に弱い私は今年の一つの目標として、一番寒い時期に、より寒いところへ行って緩んだ心身を引き締める、というテーマを自分の中に掲げていたので、雪の会津行きで一応冬のテーマはひと区切り。今日からは春に向かってまた新たな目標を立て頑張らなくっちゃ。