「テレサ・テン物語」

 6月2日放映の「テレサ・テン物語 〜私の家は山の向こう〜」の録画を見たのだが、これにはちょっとがっかりだった。物語ヒロインのテレサ・テン木村佳乃の顔や体型があまりにもかけ離れていることは、数ヶ月前のキャスト発表の時から気になっていた。それでも、演出や俳優の努力によりその違和感を埋められるというものが、実録ドラマというものだ。 以前、フジで「女の一代記」シリーズと銘打って、杉村春子米倉涼子が、天海祐希越路吹雪を、宮沢りえ瀬戸内寂聴を演じたドラマがあったが、あの時は同じようにみな風貌が違っていたにもかかわらず、ラスト近くにはなんか本物のヒロインとちょっとかぶったりしたものだ。それなのに、今回のドラマは最初から最後まで木村佳乃のままだった。いや、もちろん、彼女は綺麗だし、演技もずいぶん研究したり頑張ったのだとは思いますが・・・。でも、ちょっと力はいりすぎてて見ているほうがハラハラした。特に、ステージで歌っているときね。テレサはあの声の通り、もっとしなやかで、たどたどしくて、ベールがかかったような優雅さをまとって歌っていたものだった。佳乃さん、カードのCMのスカッとしたかっこよさをちょっと引きずり気味。テレサはもっと雰囲気違ってた気がする。
 しかも、実話にせよどうにせよ、ラストのピエールとのエピソードはあれだけの女性の人生のラストステージとしてはなんだか哀れ。こんなことを言っては本当に不謹慎だけど、テレサほどの人のラストには、もっと国家的陰謀説とかもちらっと匂わせるくらいドラマチックに飾ったほうがふさわしい気がする。
 全編、日本語というのもどうかと思う。あの時代、台湾は日本語がバリバリ通じたという背景があるにしても、外省人テレサの家族がそんなに流暢な日本語をしゃべったとは思えない。今時、中国語ができる女優もけっこういるのだし、あの忙しい上戸彩だって李香蘭を演じた時はかなりしゃべっていた。しかも、フランス人のピエールまで日本語、テレサとは英語で会話してたんだろうから、あんな片言の日本語に当てる必要あるのかい?(笑)そんなネイテイブ言語の中、「私の家は山の向こう」だけいきなり中国語でハミングとかされても、なんかピンとこない。それにしても、テレサの歌は吹き替えでなくて本当に良かった。曲が流れる時だけはウットリ。テレサの美しい歌声を久しぶりに聴けたのはとてもよかった。ま、いろいろ好き放題言ってますが、今後海外スター列伝ドラマを作るときは、私のようなウザいオタファンもいるので、作り手の方は全体的にもう少し配慮していただきたいものです。