「ハウルの成功要因」〜梁家輝のエッセイより 

中国で反日運動の吹き荒れる中、香港でもいろいろな芸能人がそれに関して発言していますが、我らが家輝さんはエッセイのなかでもいっさいそのことに触れません。それどころか、まるで我らを励ますかのごとく果敢にも日本ネタをちりばめてくれています。改めて、殿のすばらしい良識と優しさに感謝、感謝、感謝!です。


香港文匯報4月15日の梁家輝のエッセイより 
ハウルの成功要因」

 宮崎駿の「ハウルの動く城」は彼の珍しい失敗作だといえる。しかし、この映画が日本で上映されたとき、多くの興行記録は更新され、暫時日本の映画史上入場延べ人数ベストテンの第2位(第1位と第3位は「千と千尋の神隠し」及び「もののけ姫」で全て宮崎駿作品だ)となった。もしかしたら脚本はただ映画の成功要素の1つであり、監督と俳優の魅力もまた無視することができないのかもしれない。

 宮崎駿におのずから固定ファンがいるのはいうまでもないが、しかしアニメーション映画の中に俳優がいるのか?いるときもある。「ハウルの動く城」の日本語吹き替えは木村拓哉倍賞千恵子が主役を担当していて、ただ2人のすばらしい演技だけで映画は大好評を博したとも聞く。木村拓哉に関して多く紹介する必要はないだろう。彼は魔法使いハウルの吹き替えをしているが、もちろん彼の姿は見えない。しかし、彼の外見とアニメの中のハウルはなんともぴったり合致していて、まさに木村以外を想わせない。(ハウル木村拓哉そのものだと想う)

 映画の利点(または局限)は、小説の描写を具体化できることである。原著はハウルを美男子に形容しているが、いったいどのくらい美しいのか?まことに人はそれぞれ違う見解を持っていて、役者はアニメのキャラクターのように簡単に読者の認知を得られるとは限らない。宮崎駿ハウルを日本の少女漫画の男主人公のように描き、筆者は一見して笑い出しそうだったが、そのあと納得した:ハウルは確かにこんな様子であるべきだ!

 宮崎駿が木村のアフレコ(吹き替え)を聞き終わった後に、指を打って言った:「なるほど、ハウルはこのような人なのだ」つまり木村はハウルに息を吹き込んだ。懐疑論者はこのような賛美は宣伝のための文句だと思うかもしれないが、宮崎駿の身分と地位をもってすれば、全く宣伝のためにこのようなことを言う必要はない。

物語の本当の主人公は実はソフィーで、演じる年齢は18歳から90歳までである。そのためこの役柄の吹き替えはさらに困難であるが、倍賞千恵子の演技をもってすればそれもお手のもので、みごとに好評を得た。若い人は倍賞千恵子を知らないかもしれないが、彼女は「男はつらいよ」シリーズの寅次郎の妹さくらである。もし寅さんでさえ見ていないのなら「幸福の黄色いハンカチ」をあげる必要もないだろう。要するに、この大ベテランの役者が、18歳から90歳の女性を生き生きとそっくりに演じることができたのがみごとで、それがこの映画の成功したもうひとつの要因である。