『香港映画の街角』

fai22005-02-22

野崎歓さんの『香港映画の街角』、やはり買ってしまいました。書店で本を手にとって、第一章『香港映画は屋上をめざす』の冒頭部分を読んだら、もう置いては帰れなくなりました。著者の導入方法というか誘い方は大変絶妙で、一気に香港映画の時空に遊泳してしまいました。久し振りに香港映画礼賛の本が出版されて嬉しいです。まだ最初しか読んでいないけど、最近見た映画でいちばん印象的な屋上シーンはやはりなんと言っても「新警察故事」の香港会議展覧の翼屋。こんなことも導入部分からはまってしまったひとつの原因かもしれません。愉悦は一気に味わうのはもったいないので、ゆっくり読みます。

「生首に聞いてみろ」は作者と同名の探偵が謎解きに挑む本格推理でした。こちらはもうまったなしで一気に読みました。本格推理の醍醐味は、最後にまるでルービックキューブがカチッという快い音とともにピタッと全部の面がそろうように、謎が全て解き明かされることなので、その意味ではこの作品は傑作です。モチーフはやはり既存の感は否めませんが、今の時代、本格推理に果敢に取り組まれたというだけでも拍手ものです。そういえば、私がこの本を読むきっかけになったのは三谷幸喜さんのエッセイでしたが、三谷さんの作品もどんなにとっ散らかっていても必ず最後は風呂敷の中に収まる、というところが真骨頂なので、彼が褒めるのは当然ですね。それと、「生首…」はいずれ必ず映画化されると思いますが、オールキャストとか派手な演出は抜きでうまくまとめれば、なかなか味のある佳作ができるのではないかと思います。派手さはないけれど、私は好きな作品でした。


風邪もう治ったかと思って調子こいてたら、またぶり返してしまいました。皆さんもどうぞお気をつけてください。