「準備下班」〜梁家輝エッセイより

fai22005-01-27

 香港文匯報:1月24日のエッセイ、「準備下班」です。
 家輝さん、人脈が広いせいか、しもじものことまで良くご存知です。恐れ入りました。
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 偶然、大会社の管理職の人から聞いた話だが、現在就職試験の面接時、絶対に「毎日、何時が退社時間ですか?」と質問してはならない。さもないと面接の返事はまずないだろう。なぜなら今のサラリーマンは何時に退社できるかなど誰も正確に把握できないのだ。
かつては、従業員の残業賃金は報酬と別だった。香港人がよく言う「超時補水」あるいは「OT」、後者は英語で時間外のことだが、しかし、バブル崩壊以来、どの企業でも「削減」、「人員整理」あるいは「自主退職」がいわれ、サラリーマンの仕事は日々重さが増し、朝9時夕5時にせよ、朝8時夕6時にせよ、全く意味がない空論で定刻退社なんてできるはずもなく、ましてや残業手当などあろうはずもない。

 20世紀の経済がさかんな時代、ある一種の「新人類」といわれる人たちが出現した。彼らは生活の意義を考え、仕事を第一としないで、むしろプライベートに時間を優先した。家族と一緒にいたり、自分を磨いて資格をとったり、趣味にこうじたりした。本来これをとやかく言うことでもないのだが、ただ残念なことに、新人類は時期の悪いときに生まれた。世界中不景気風の影響のもと、人々はまず仕事を確保することを求め、生活の意義云々なんて言っていられない。

 社会人になって以来、筆者はずっと明確に職業と事業を分けて見てきた:ほとんどの人々はみな職業によって生活費を得ているが、しかし職業は事業と同じではない:毎日16、7時間以上働いて、休日といったらただ寝るだけ、勤勉そのものだ。しかし、あなたは多分ただ職業の泥沼に陥っているだけで事業とは無関係だ。こんなふうで、どうやって人生の目標を実現することができるだろうか?

 ニュース映画の中で一人のOLが不平をもらしたのを覚えている。「会社は従業員に定刻に出勤することを要求できるっていうのに、どうして私たちは定刻に退社することを要求できないの?」

 もちろん契約精神は公平であるべきだ。従業員が無償で残業をするといったら、会社がうまいことやっているように聞こえるが、実際そうとも限らない。従業員は職場で生産力になっているかどうかわからない。彼はインターネットで無駄なおしゃべりをしているかもしれないし、あるいは白昼夢を見ているかもしれないし、またある人はわざと仕事を遅らせて時間外業務にして、やる気を示しているかもしれない。その結果、従業員は時間を、会社は電気代を、どちらも損失することになる。