『導盲犬小Q』 家輝エッセイより

fai22004-11-09

家輝が珍しく自分の仕事に関係あることをエッセイに書いていました。
吹き替えを担当した『盲導犬クイール』に関して。下記が全文訳です。
いやあ、後半部分には香港人映画人気質が垣間見れる文章で私的に最近の大ヒット。
大いに受けましたわ〜@@

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盲導犬クイール』[香港タイトル:導盲犬小Q]は、先ごろ香港で上映されてはとても評判が良かった。日本ではテレビドラマにもなり、玉置浩二クイールの主人渡辺の役を演じている。最近中文版のDVDも発売になり、聞くところによると夏休み映画のチケットと同じようによく売れているようだ。自分も人気がある映画の仕事に関われて、もちろん喜びに値する。しかし、私はただアフレコ(吹き替え)をしただけで、もともと仕事の比重は多くないのだが、それでも光栄に感じている。
他でもなく、よいストーリーは観衆に認められるべきであると感じ、この映画が喝采され人気を呼び、だから彼らのために喜んでいる。

盲導犬クイール』の物語はとてもシンプルで、表現方法もとても平板で、ただ盲導犬クイールの一生を記述しているだけだ。彼の死に至っては、ナレーションでただ述べるだけで、人に質朴な感じを与える。
商業がまず念頭におかれる時代に、この「クイール」のような映画が世に出て成功するのは本当に容易ではない。しかしこの映画は各地で大変成功した。私が思うにこれは質朴だからこそである。愛情がしみじみと注ぎ込まれ、誠実な表現でもって、自然に人を感動させた。

私たちはかつてふざけてこんな話をした。もしも香港のシナリオ・ライターが「大胆にも」このような一本のシナリオを持って投資者を捜した場合、結果はどうだろう?出資者は激闘場面を入れろと彼に要求するだろう、とある者は言った。たとえば、クイールが強盗に襲われた渡辺を救うシーンとか、あるいは渡辺が盲目拳などの使い手だったりするとか。またもっと劇を内容豊富に盛り上げるために、校長と渡辺の娘の恋物語を入れるとか、また仁井さんが、彼の奥さんが一日中クイールの面倒を見ることに不満を持ち浮気するとか。せめて、クイールにガールフレンドを見つけてベッドシーン(?)も盛り込むとか。

しかし、私たちは最後まで結論が出なかった。なぜならば香港でこの「クイール」のようなシナリオを携えて投資してくれる人を捜そうと思っても、まず間違いなく初めから会ってくれる出資者なんかいやしない!
もちろん、『盲導犬クイール』がとても良い実績を残した今日なら、たぶん話は別かもしれない。このようなタイプの映画はローコストでの製作のため、大スターを配する必要もなく、もしかしたら、突然、市場に「医者猫の小P」とか、「麻薬取締犬小Kの一生」などという類の作品が、わんさと湧いて出るかも知れない。本当におもわくはなんともわからない。