『つぐない』

fai22008-04-30

 1935年のイギリス。名家タリス家の末娘ブライオニーは小説や戯曲を書く多感な少女。ある夏の昼下がり、庭園の池の前で美しい姉セシーリアと使用人の息子のロビーが些細ないさかいをしているのを目撃する。そして、タリス家の晩餐にロビーが招待された日、彼はセシーリアに書いた情熱の手紙をブライオニーに渡してくれるように託す。しかし、ロビーに対して少女らしい淡い気持ちを持つブライオニーはその手紙を開封してしまう。晩餐の日、お互いに惹かれあっていたロビーとセシーリアはついに家の図書館で愛を確かめ合うのだった。しかし、その直後、ある事件が起こり、無垢な心のブライオニーの小さな誤解と出来心から、姉と恋人は引き裂かれる運命になる・・・。二人の人生を狂わせた少女も一生重い十字架を背負うことになる。
  イアン・マキューアン原作の英国文学ベストセラー小説『贖罪』を『プライドと偏見』のジョー・ライト監督が映画化。複雑で重いテーマであるが、みごとな映像で、大変心に残る秀作だった。主演のキーラ・ナイトレイは厳格なまでに美しくすばらしい。そして、ブライオニー役のシーアシャ・ローナンの風貌(特に瞳)と演技がこの映画の苦悩と切なさを際立てている。英国の荘園の優雅さと戦争時代の混乱、デリケートな少女が屋敷の中や野原を駆け抜けるスピードや表情、波打つ心動とタイプライターの規則正しい打音、荘厳で美しいBGMなど、緻密に計算された演出効果も絶賛に値する。本当にすばらしい映画だった。途中、なんとなく無垢で一途な少女の痛い話なところや劇情の雰囲気が『ラスト・コーション』にかぶったが、ラストシーンのブライオニーの告白と海辺のシーンに少なからず救われ、気分が滅入らなくて済んだ。そうした展開にも拍手を送りたい。

Tsuguani | by Monica


贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪〈上〉 (新潮文庫)

贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)

贖罪 下巻 (2) (新潮文庫 マ 28-4)