『ドラマー』

 念願かなって、本日、朝日ホールで『ドラマー』を見ることができた!
 10月に香港や台湾で公開だった映画がこんなに早く日本の銀幕を飾るなんて、本当に夢みたい。今日は朝からずっとかなりの興奮状態だった。その上、映画の上映前に朝日ホールの会議室で畢國智(ケネス・ビー)監督と主演のジェイシー・チャン(房祖名)のトークイベントや二人の舞台挨拶があったり、上映後にはケネス監督のティーチインもあったりで、ファンにとっては至れり尽くせりの映画祭上映だった。

  以下、変な感想、しかも、ややネタバレありです。ごめんなさい・・・

 今映画祭では18日の夜にもシネカノンで上映があったので、本日の上映は2回目だったわけだが、「くうぅ・・・残念なことをした、18日の夜も見ればよかった、もう一回観たい〜〜!!そのうち公開されるとは思うが、今すぐ、もう一回見たいーーー!!うぎゃあー!だーりーーん!・・じたばた・・・」 これが、映画を観た第一感想です。映画も想像していたよりずっとずっとよかったし、なにより、ダーリン家輝さんの演技が本当によかった!家輝さん、黒社会のボス役と聞いていたのと『戦・鼓』のブログで見た写真の衣装で、また大Dのように軽薄粗暴なタイプでボスるのかと思っていたけど、組織での顔とは別に、愛情に満ちた親心がしみじみ溢れていて、すばらしい演技だった。しかも、いい身体を見せつけて、太鼓までたたくというサービスカットまで・・・もとい、白熱シーンまであって、すごくよかった!はい、あれは、声どころか、身体も吹き替えではありませんでしたよ。(監督への質疑応答のコーナーで「レオン・カーファイさんの声は吹き替えですか?」という質問があったけど、あれはまさにダーリンの地声なんだけどなあ。あの個性的なダック声・・・笑)

 映画の主役のシド(ジェイシー)や、台湾の山中で拳法や禅や太鼓の鍛錬を積む「優人神鼓」に関しても興味深いシーン多い。そして、もう一人注目の伏兵は阿照(ロイ・チョン)。実は、自分的には、この人の行動にいちばん吸い付けられた。彼は、家輝さん演じるクワン爺の手下役。香港ヤクザのクワンが、昔自分の命を助けてもらった恩義のある大親分スチーブンの女に手をつけた息子(シド)を台湾に逃がす際、お目付け役として阿照を派する。その逃亡先の台湾で息子のほうは神太鼓と遭遇し魅せられていくわけだが、彼の見張り番役の阿照は特にやることもなく自己啓発セミナーに通ったりしている。しかし、暇つぶしに通ってたのかと思ったら・・・、うぉーー、君にはそんな目標があったのか!ど、どこで、その野望が生まれたのか?ま、まさか、セミナーでってこともないだろうし・・・。そして、シドはいつどの時点で阿照が父を○○○って気づいたの?まさか、太鼓を一心不乱で打っているうちに仙人のように天啓を受けたか。映画の冒頭で、家輝さんが猟をしているシーンやアイスクリームを食べるシーンなど、映画の後半にも繋がりを感じる画面は多い。阿照が自分にも息子がいるんだ、と言ったり、クワンが娘婿に身体を鍛えろ、と言ったり、そんなちょっとしたセリフにさえもあとでオチがついている。だけど、その二つの点だけは、私の中ではちょっと宙ぶらりんで疑問が残ったまま。どこかにつながりのある画面があったのを見逃したのか。ケネス監督は「シドはまるで釈迦のようだ。王子として生まれ、そして自分の道を見つけていく」とおっしゃっていたが、監督のお言葉どおり、映画の中には哲学的なセリフも多く、きっとどこかに、私の疑問の答えも潜められているのだろう。なかなかその行間をいろいろ考えさせてくれる作品である。ふうむ・・・。ああ、とにかく、もう一回見たい!