『三峡好人』

 本日から東京フィルメックス映画祭がスタート。オープニング作品はベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した賈樟柯(ジァ・ジァンクー)監督の『三峡好人』。
 『三峡好人』は、三峡ダムの建設のため変遷する四川省・奉節を背景に、家族を探す炭鉱労働者や女性の姿を通し、三峡の水の流れのように人々が生きていく姿を描いている。三峡の風景、人々の様子、生き方、そしてそこの暑さやにおいまで、HTVで撮影された画面には描かれていて、映像にはかなりひきつけられた。ストーリーは一度見終わったときは、少し断片的で分かりづらい映画だな、と思ったが、ティーチ・インでの監督の話を聞いたあと、この映画の中に一貫して流れている渡世感のようなものを感じて、素朴で素直な感動を得た。中国の古い町が時代と共に変わり行く中、その景色や普通の人々の生活の描き方、使われているモチーフや音楽、全て「THIS IS  中国」という感じではあるが、いかにもなあざとさや気負いが全然無くて、なんていうのかな、「生(き)」という感じがして、私は自然に映画に入り込めたし、好きだった。賈樟柯の魅力はここだったのか。
  『三峡好人』の撮影は余力為、梁家輝主演、製作の「天上人間」を監督した人。「天上人間」のキャストだった周智生も今回賈樟柯組でカメラをまわしていたようだ。
  香港や中国の才能有る若手映画人に助力を続ける家輝さんは、現在も低ギャラで映画撮影中。近い将来、賈樟柯監督の映画に出演ってこともかなりのセンでアリだと思われます。