『玉蘭』

 夕べ、枕の書として桐野夏生の『玉蘭』を読み始めたら止まらなくなってしまい、つい夜更けまで完読してしまった。想像していた内容と全然違う話だったが、やはり桐野夏生らしいといえばらしい作品だった。本作以降に書かれた『グロテスク』を先に読んでいたので、主人公有子の留学先上海での壊れ方には、驚きこそしなかったが、かなり湿度の高い息苦しさを覚えた。彼女を取り巻く男性たちの心情ややり取りも、大方そんなもんなのかと思わせる筆致なので、やはりなんか陰鬱な感じは残る。現在に生きる有子の前に幽霊となって現れる伯父の広野質。彼は1920年ころの中国内乱の時代に生き、その恋人浪子とのストーリーが時空を越えて展開される。この二人の話には、背景が動乱の時代だけに魂が蒼白く燃え上がり確かに玉蘭の香りも匂い立ってきそうなドラマチックな切実さを感じることができた。

 

玉蘭 (文春文庫)

玉蘭 (文春文庫)

 しかし、やはり寝る前に桐野夏生はちょっとやばかった・・・。今日ブックオフ宇江佐真理買ったけど、寝る前はやめておこう。