「旺角黒夜」

 キネカ大森、土曜日はケイさんが見にくるというので、私は仕事を終わらせると速攻で大森に向かいました。ケイさんたちは初回の上映を見ていたので食事から合流して、せっかくなので、久々にお会いした方々と香港話を楽しみ、映画は改めて日曜日に見ることに。で、日曜日、キネカに出直して参りました。
 やはり、映画は大画面で見るに限りますね。特にこの映画は暗いシーンが多いのでうちのテレビでDVDを見たときといろいろなシーンの迫力や鮮明さが圧倒的に違いました。もちろん日本語字幕が付いているのはとても嬉しい。DVDで見たとき、何箇所か何度か画面を静止して字幕の中国語と英語で何とか自分なりに意味をくんで解釈していたところも、日本語字幕を見ると、なるほど〜と納得の意思もあり、作品をより理解できました。

 この作品は楽しい面白い内容というわけではなく、どちらかというと暗いのだけれど、私はかなり好き。今回、映画館で見たときもすぐ映画の中に引き込まれて、ドキドキしながら見た。見れば見るほど、考えれば考えるほど、全てのシーンに意味が篭っている。旺角のたった一夜に、偶然出会った数名の男女の運命が、時と共に闇のなかで刻まれていく。これはすべて「縁イ分」というもの。そして、アレックス・フォン演じる苗Sirやカーロー兄ちゃん鬼哥や新入り刑事たちの警察の側のストーリーと、中国から殺し屋としてやってきたダニエル・ウーと娼婦セシリア・チェンとの逃避行と(この二人が男女関係にならないところがいい)、対立する黒社会のボスや大陸出身の手配師、林雪さんたちが絡み合って、夜はしじまへといっそう深く暗さを増し、ある接点で因果の炎が炸裂する。

 フォンさんの抑えた演技も、ダニエルのいかにも田舎から来た純朴な中国青年役もとてもいい。カーロー演じる鬼哥は、警察側の物語の中ではキーワード的存在で、彼の言動によって、言葉数少ない苗Sirや、新人刑事や、王合喜演じる切れやすい警官役の輪郭をより鮮明にしている。物語の情節も役者の配置もイー・タンシン監督、みごとです。本当に香港金像奨を受賞するに値するすばらしさです。

(ここから5行ほど、ちょっとねたバレあり)何度見ても、新人が駆け出してポケットを探る、あの一瞬の間には、息を呑む。またラストシーンで苗Sirが後ずさりしたあと、手を握ろうとしてみるところ。「ダブル・タップ」以来の苗Sirにそこで少し変化が起こったのか。フォンさんが赤い炎に手をかざすシーンもかなり深い。カーローが担当したアクションシーンもメリハリがあり、全篇の緊張感をさらに高めている。

 気になることは、タイトルの英語のNIGHTがどうしてNITEになっているのかってこと。DVDでもそうだった。なぜだろう?

 映画館で上映中に絶対もう一度行こうと思っています。あと、映画館ではカーローのインタビューも流れていたので、これから行かれる方はご覧になってね。会場に展示しているケイさんの漫画(「旺角黒夜」のロケ現場訪問)のなかに私も登場していてびっくり(笑)。あの日のジョーダンの屋台街、箱かぶって遊ぶカーローや、モミ手の林雪さんや、映画の中と同じように疲れた表情の王合喜を思い出して懐かしくかつおかしかった。