『ドリームガールズ』

 新宿3丁目に新登場のシネコン、新宿バルト9で遅ればせながら『ドリームガールズ』を鑑賞。バルトに行ったのは始めて。「バルト」ってどういう意味なんだろうと思っていたら、「WALT」と書いてドイツ語の「森、森林」という意味だそうで。「エンターティメントの森」っていうのがこのシネコンのコンセプトだそうです。
 『ドリームガールズ』、ミュージカル仕立てなので、出演俳優が物語をほとんど歌って語っているので、退屈なく楽しめた。モウタウンの興隆と崩壊を思わせるアメリカンショービジネス界の舞台裏と人間模様。黒人放送局でしか流せなかった黒人たちによる音楽パフォーマンスをジェイミー・フォックス演じる敏腕プロデューサーが金と悪辣な手をフルに使ってアメリカのショービズ界でのし上がっていく。そこで生き残ってスターになれるのは実力よりもスターとしての華がある者、そして素直に運命を受け入れられる者。実力があっても自分を押し出したり、秩序を乱すものには情容赦ない。わがままも過ぎれば、昨日まで「俺たちは家族〜」とか言っていても、一気に切られる冷酷な世界。そういうのは、とてもわかるからいいのだけど、でも、出演者の皆がわりと性善説の人ばかりみたいなのは、ちょっと物足りない気がする。ミュージカル仕立てなので、歌の部分が極度に長いので、一人ひとりの背景や感情描写まで到っていないからだろう。歌は好きな種類の曲なので、ほとんど良かったが、ジェニファー・ハドソン演じるエフィがドリーメッツを離れる時に、未練たっぷりに歌い上げるソロはちょっと長すぎの感あり。確かに一番のクライマックスではあるけれど、最近年のせいか、あまり力が入りすぎた迫力あるパーフォーマンスを突きつけられると、魂吸い上げられるような疲労感を覚える。結局、劇中、エフィの再生をかけた楽曲「ワンナイト・オンリー」も確かにしっとり歌い上げるエフィの歌唱はすばらしいが、軽快にアレンジされたドリームガールズの歌のほうがヒットするのは、こういう要素もあるかもだ。